寝汗にもいくつかの種類がある
人間は就寝時にはだれでも発汗をします。それは睡眠が深くなると視床下部の発汗中枢の体温のセットポイントが下がり、体温を下げようとして汗をかくからです。特に、最初に睡眠が深くなったときに多くの汗をかく傾向があります。これらの発汗は「寝汗」と言っても全く生理的なもので異常ではありません。汗のタイプも運動後にかくようなサラサラとした汗です。
「寝汗」のなかでも「盗汗」と呼ばれる種類のものがあります。これは頭部や首から胸の周りを中心に粘っこい汗をかくもので、虚弱な人や、精神不安の人、慢性の消耗性の疾患の人に多くみられます。こちらは、治療の必要があり、病気が治癒されれば寝汗も減少します。
もうひとつは健康な人でもよくあることですが、夢を見やすい人が何か興奮するような夢を見たとき、一時的に発汗中枢が刺激されて多量の汗をかくことがあります。起床時にパジャマがびっしょりとぬれていることがあるのは、朝方の「レム睡眠」時に汗をかきやすいからです。
不眠症の人は、汗腺機能が不調な人
一方で、不眠症の人は汗をかきにくいという事実もあります。
人間の体温は、日内変動といって、昼体温が上がり夜下がるというリズムを保ちながら健康を維持しています。夜に体温の低下に伴って基礎代謝が下がり、「プチ冬眠」のような状態になることで熟眠できるのです。そのため、寝入りばなに生理的な寝汗をかいて、体温を下げることが大切になります。
ところが、汗をかきにくい体質の人が、体温が高い状態が続いたままで寝ると、基礎代謝が下がらず、「プチ冬眠域」に入りにくくなります。例えば、風呂上がりにすぐ冷房にあたり、皮膚温が下がることで汗が止まり、まだ十分に脳温が下がらないままで寝ると寝つきが悪くなるのはそのためです。
つまり不眠症の人は、体温を効率よく下げるための「いい汗」をかきにくい、汗腺機能が不調な人であると言えるのです。
不眠症や多汗に効く、汗腺トレーニング
スポーツやサウナで汗腺の働きを活発化させる汗腺トレーニングが、不眠症の対策として有効です。トレーニングによって効率よく汗をかけるようになった汗腺は、睡眠時に有効な寝汗をかき、「プチ冬眠」のために最適脳温をもたらすでしょう。
汗腺トレーニングの成果はそれだけではありません。汗腺が鍛えられて、体全体にいい汗をかきやすくなった体は「代償性の発汗」をする必要がありません。発汗中枢は、「他で十分汗をかいているから、他の汗はほどほどに!」という発汗抑制の指令を出すようになるので、局所的な多汗も克服できます。